科学技術政策に関する守屋繁春の意見 : 2009.11.24 Tuesday
以下は、守屋バイオスフェア科学創成研究ユニットの守屋繁春より個人的投書としてほぼ同じ内容のものを複数の関連政府機関・政党へ投書した内容です。
当ユニットとしてのアクティビティーではありませんが、匿名での配信ではあまり意味がないと考え、こちらにも掲載します。
なお、この内容は理化学研究所の見解とは独立した守屋個人の意見として発信していることを念のために申し添えます。

***   ***   ***

行政刷新会議において行われている事業仕分けにおいて、科学技術系の予算に対する厳しい判断が続いています。
これに関しては科学研究の事業者側の説明にも問題があるといわざるを得ませんが、それと実際に科学技術系事業に対する厳しい風当たりは別の話だと思います。
そこで、科学技術に携わるものとして、科学技術政策上考慮すべきであると思ういくつかの点を指摘させて頂きます。
乱文乱筆恐縮ですが、何かの参考になれば幸いです。

私が考えるポイントは2点あります。
すなわち、多くの基礎科学研究で仕分け担当者から聞かれた以下の二点の意見に集約されます。

・多くの制度が錯綜しており、これを整理して予算を節約すべき
・収益の可能性を評価し、事業の有益性を説明すべきであるが、意味のある説明が得られなかったので、評価できない。

前者に関しては、多くの制度が錯綜しているのは事実であり、それは科学者である私も大いに疑問に思うところであります。
しかし、それと予算の縮減は全く別の問題です。
様々な制度が乱立してはいますが、極々一部の不心得者を除き、研究者はそこから「不当」に多くの予算を獲得することはありません。
複数の予算を獲得していることはもちろんありますが、そこにはエフォートによる切り分けがあります。
これは最近導入されたe-radシステムにより有効に機能していると思います。

しかし、問題の本質はここにはありません。
誤解を恐れずにいえば、このほとんど病的とも言える予算取り扱いへの清さの要求は、研究者の自由な発想を妨げています。
欧米の科学研究予算は「アワード」として与えられ、その使用方法は研究者にほぼ完全に一任されます。
それに対して日本のシステムは年度をまたいではいけない、エフォートの厳格な管理、研究者も出席しての会計監査、etcetcと、研究者に研究以外の多くの事務的タスクを強要します。ただでさえ、欧米に比較して全体の科学予算が少ない(他省庁のものも含めた全ての事業を合わせてもです!)にもかかわらず、非常に使い勝手が悪い。これに関しては海外から来日している研究者へ是非意見を聞いて頂きたいと思います。
重要なので繰り返します。日本の科学技術予算は大量に併存する様々な事業を全て合わせても先進国としては低い水準であり、しかも研究者の時間は研究とは無関係である予算運用上のタスクによって(しかもそれは諸外国ではあり得ないタスク)大幅に割かれているという事実があることをどうぞご考慮下さい。

後者はもっと根深い問題があります。

評価できない。

では、仕分け人は「正しく」事業の波及効果を評価できたのでしょうか。人類の未来にそれぞれの仕分け対象の事業がどれほどの大切さがあるか、きちんと諸外国の類似研究の動向から様々な波及効果、可能な特許、それらの事業可可能性、そもそもピュアに近いものの場合はそれが応用研究へどの程度の影響を持ち得るか・・・。これは、大変な作業です。当然、仕分けに携わった方も「出来た」とは思っていないものと思います。
そして、残念ながら科学系事業の評価は現在ほとんど定量的に行われていません。このような評価のシステムが無いのを責めるのは結構ですが、だからといって評価が出来ないからとりあえず立ち止まるとするのは、それが例え一次的なものであるとしても非常に危険なことであることは銘記すべきです。
非常に重要なことは、科学はそれがどんなにピュアな分野であっても常に国際的な激しい競争下にあるということです。立ち止まることは、すなわち取り返しのつかない遅れを喫することに他なりません。「立ち止まって考え直せ」と言うのは簡単ですが、その言葉は科学分野ではすなわちその事業にかかわる全ての未来を放棄するということに限りなく近いということを肝に銘じたうえで発するべき重い言葉であるということを、日本そして世界の未来に対する最大限の警告とともに申し上げます。

評価システムを構築する際に重要なのは国としての科学政策上のビジョンです。それがあって始めて評価のための質的な物差しが出来ます。
それを示す前に表面的な事業上の財政収支でその事業の有用性を計るのは、短絡的といわざるを得ません。
立ち止まるべきは科学ではなく、科学技術政策立案の方です。ここを再考するということになれば、全ての科学者が労を惜しまず協力するでしょう。
それは、日本と世界の未来を考えるという歴史的な作業になるでしょう。
科学技術予算を見直すのはその後です。物差しが出来てから見直すべきです。現状は明らかに順序が逆です。

是非良く議論して頂ければと思います。


最後になりましたが、今回のことは科学者側にも全く非がないわけではないと私は思います。むしろ、非常に重い罪があると思います。
それは、科学者がそのコミュニティーを越えて、広く自分たちの極めている科学を発信してこなかったという点です。
重要なのは、我々も科学コミュニティーの中だけの価値観だけにとらわれることの無いよう、世界の不思議とロマンをスポンサーである国民と共有し、その中から全く新しい生活を豊かに、便利に、安全に、そして未来へ継続させるために必要な知恵を産業界と手を取り合って取り出していくという姿勢を明らかにするべきであろうと考えています。


大変な時期であり、ご苦労も絶えないとは思いますが、是非とも共に考え、明るい未来のために努力できればと思っています。

守屋繁春

理研横浜研究所一般公開 : 2009.07.02 Thursday
7月4日(土)に理化学研究所横浜研究所の一般公開があります

横浜市大大学院研究棟3階の「環境分子生物学研究室」にて、ポスター展示と顕微鏡でへんてこ生物たちを紹介します!
また、理研PSCの環境研究の展示に協力します(中央棟二階・C214ー220室)。
PSC展示会場では13時よりトークショーもあるのでこちらも是非!
あのしろありんもやってきます。
詳しくは次のHP(http://www.yokohama.riken.jp/event/20090704/index.html)をご覧下さい。

新メンバー紹介 : 2009.06.27 Saturday
 もう夏の声も聞こえてきている今日この頃ですが、4月と6月に入った当ユニットのホープの紹介をします。

一人目はクレイグさん。
アメリカからやってきた彼は、日本人の奥様を持つ日本好きの藻類学者。当ユニットの新テーマである海洋性の微細藻類の研究を担当しています。
このテーマは、僕自身が細々とこれまで行ってきたのですが、今年度から筑波大学との共同研究もグラントが得られ、本格的にスタートしました。
最初のテーマは、まずは安定した小さな屋内複合生態系「エコトロン」を作ること。僕の作った粗末な培養装置を勝手に「エコトロン1」と名付け、現在次世代実証機の「エコトロン1.5」を、ドリルとか接着剤を使ってなにやら組み立て中です。
夏には、実験機「エコトロン2」も完成して本格的な研究に突入予定。アメリカンギャグを連発しながら頑張っていますが、僕が言うアメリカンギャグは絶対に笑ってくれないのを、どうにかしたいところです。

二人目は木原さん。
大阪からやってきた彼女は、シロアリの研究を担当してもらっています。心配したシロアリとの相性も良く、逆に「かわいーーい!」と多少世の中の基準とずれた感想を叫びつつ、当ユニットの虫愛ずる姫として、活躍を始めています。虫と言えば、原虫とも呼ばれるシロアリ共生性の原生生物。これにも、「かわいーーい!」という評価を下す彼女は、もしかすると、かわいいの基準に何らかの突然変異があるのかも知れません。まあ、かわいいんですけどね。僕的にもシロアリ・原生生物共に。
ただ、僕をハンバーグ師匠と呼ぶのはやめて下さい。。。

二人の研究はHPから見ることが出来ます。
こちらからどうぞ!


播磨一般公開にボランティア参加 : 2009.04.26 Sunday
しろありんが出動と聞いてボランティア出動しました@播磨
実はSPring8が見てみたかったというのもあります。


晴れた空の下のXFEL棟

SPring8には実は名物キャラがいます。
それはニャン博士を始めとするエイトハカセ。
SPring8の研究者がこつこつと研究の合間に書きためたHP用のキャラクターです。
http://www.spring8.or.jp/ja/for_kids/

当日はニャン博士も出動という知らせを聞いて勇み立つチームしろありん!
とうとう感動の初対面をしたのでした。


ニャン博士の視線がかわいい

SPring8は大型放射光施設とあって、巨大な装置達のオンパレードなのですが、パネルを使った環境研究の説明は意外にじっくりと質問を交えながら聞いていって下さる方が多くて、励みになりました。
特に高校生や大学生のカップルが真剣に質問を繰り出しながら聞いてくれたケースが多かったのが印象的でした。
中には、一瞬ぼーっとしていた僕をつかまえて質問して下さる方もおり、環境問題に関する関心が高いんだということを再認識。頑張らねば!

シロアリ研究のみならず藻類研究や、植物センターの研究、基幹研究所で行われている重粒子線による植物育種や、触媒科学の可能性なども、それぞれ関心を引いてもらえたと思います。
どの方の説明の後にも、可能な限り、自然を僕たちはまだ全然知らないんですよ!ということを強調したのですが、高校生カップルの「・・・こんな世界もあるんですね」という言葉と、きらきらした目がとても(勝手に)嬉しかった春のXFEL建屋でした。

和光本所一般公開 : 2009.04.19 Sunday
しろありんとそのお友達こばとん
しろありんとそのお友達こばとん

こんな感じで説明しました
こんな感じで説明しました

教室が終わってたそがれるこばとん
教室が終わってたそがれるこばとん



4月19日に、理化学研究所の和光本所一般公開で青空教室をしてきました。
良く晴れてきれいな青空のもと、森の中で環境研究の紹介です。

ちびっことそのお父さんお母さん、さらにご近所の中高生の見守る中、埼玉県のマスコットキャラ、こばとんと我らが誇るしろありんと一緒。
ちょっと突っ走り気味でしたが、森の中だったので、枯れ枝や土なんかを実際に拾って見せながらの教室で、しゃべっていて楽しかったですね。

ただ、ちょっと準備不足だったので、しろありんやこばとんとの絡みを一切忘れて一人で突進してしまったのは反省。お話しも、ちょっと素っ気なさ過ぎたかなあ。。
もっと実際に、森の循環に関係している微生物を実際に見てもらいながら、見えない関係性を実感してもらえ、それを研究することが面白くてためになるということを体感してもらえるようなイベントを出来たらなあとちょっと反省。

・・・しながら、ビールを飲んで帰ってきました。(笑)



「島の色 静かな声」視聴メモ : 2009.01.17 Saturday
立教大学ESD研究センター主催の「島の色 静かな声」上映会視聴。

西表島祖内に住む石垣金星さんの奥さん、石垣昭子さんを主人公にしたドキュメンタリー映像詩。
2006年に完成した西表島内にあるゴミ最終埋め立て処分場にゴミ袋ががんがん投げ込まれる映像が衝撃的だった。
全編を西表の自然の音が埋め尽くし、その中で淡々とモノを作る昭子さんをひたすらカメラは追う。

祖内の集落は人口役200人。そのすべての人の誕生から死まで、すべての住民がお互いにとことん知っている。

イチャリバチョーデー。島に来れば他人なんて誰一人いない。

それは、ノルスタジーやのんびりした生活というのとは違う。主催者や映像作家が目指したそんな視点を消し飛ばす、金星さんの口から飛び出す、だらんと弛緩しているようで、緊張感にあふれる言葉の数々が耳をうつ。

昭子さんは、「捨てられないモノ」作りを目指すと言う。特定の人の特定の状況に想いを込めて織られた布は着物は、決して安易に捨てられることは無い。買う人は作り手の想いも一緒に買う。バックグラウンドを知る。深く知っていれば、ものなんて簡単には捨てられない。
モノが形になる前の見えないプロセスがある。目に見える世界の裏側がホントの世界だ。そこを知らずにいるから僕らは気楽だけど、その関係性を知ってしまったら僕らの生活はどうなるだろう。

暑苦しいほどの関係性。
窮屈だろう。でも、すてきだろう。

神司の着物には魂の出入り口がある。
今も生きる本当の神様への祈り。
神様って何だ?
それは、神様というよりはもっと生命圏そのものに近いものなんじゃないのか。

犬も食う、イノシシも食う、山猫だって食う。 (ヤマネコは今は食べていません)
山猫は山の神様。
神様を殺して食う。
命の連続性。

世界は誰が何がまわしているのだろうか。それを僕らは知ることができるのだろうか。それを知ったときに僕らの社会は変わるだろうか。
人間社会はバイオスフェアから独立なんかしていない。では、なんで僕らは人工と自然を分離して考えるのか。
祖内の祭りの祈りにも似て、人間社会が意識の深層で再び生物圏と合一する。
そんな社会はくるだろうか。

複雑性の彼方に僕らは具体的な関係性を再発見できるのか?

「島の色 静かな声(Silent color Silent voice)」
 今春より都内単館系映画館で随時上映開始

茂木健一郎さんと対談しました : 2008.12.17 Wednesday
茂木健一郎さんと対談しました。
日経サイエンスの、茂木さんとの対談企画です。ずっと長いこと、いろいろな方と対談されているらしい。

茂木さんは脳科学者で、クオリアという概念を追求されている。その辺の概念を通してみたとき、およそ即物的なぼくの研究がどう映るのかとても興味がある。

シロアリの話をというリクエストだったのだが、最終的にはへんてこ生物でまとめてみた。生物圏にはものすごく沢山の生き物がいて、途方もない多様性が、実際に生物圏を「回転」させている。その回転の中に、人間社会をうまく再接続出来ると良いなという、ちょっと概念的な内容を語ってみた。
こういう議論は、物質科学の一分野であるところの生物学ではあまり好かれないのだが、この辺をおざなりにして来てしまったために、とても偏狭な要素分解的な見方しか、いまの「気鋭の」研究者は出来なくなっているような気がする。

大学院生の頃にゲノム解析の概念が出てきてからずっと、ぼくは生物学は要素分解的な手法だけで解けるものではないかも知れないと考えてきた。
もちろん、要素分解的なやり方はとても大切なのだけど、それはあくまでも色々ある攻め方のひとつにすぎないと。
で、全体から攻める方法・・・つまりマルチオミックスというのが、僕らのユニットのひとつの旗印なのだが、実験はうまくいくけど、情報の取り扱いがまだ追いついていない。研究体制に関しても、これまでは別々に研究していたような人々が一緒に仕事をしていく事になる。この辺もいろいろ問題が山積み。
またまだ、道はどこにもない。でもそれが面白い。
そもそも、対象にしている生き物自体がへんてこで面白いし、その棲息しているフィールドに出かけるのも楽しい!

そういったことどもに、実際のフィールドでの出来事なんかを絡めて、まるで導かれるように話しているうちにあっという間にお昼になった。
茂木さん、実は僕なんかが考えていること、全部お見通しなんですかねえ。。。(笑)

もう一つ考えたことがある。
今回は、とても楽しいひとときだった。編集部の方々も、どうしてそんなことまで知っているのというくらい、自然や生き物・・・特に「へんてこ」系の連中のことを知っていらして、とても心強かった。興味を持って話を聞いてもらうのは、とても嬉しいし、楽しい。
興味を持ってもらうように話すのは、その一方で、ちょっと難しい。
今回は、明らかに聴衆がこちらに近づいてくれていたなあと思う。
全然科学に興味がない人に、こんな風にお話しを聴いてもらえるくらい、精進したいもんです!

サイエンスアゴラに参加しました : 2008.11.25 Tuesday
23日、24日と、お台場で開かれたサイエンスアゴラに参加してきました。

23日の午前中には「へんてこ生物が人類を救う?」と題して、理研PSCの井藤賀先生筑波大学の石田先生と、地球の物質循環に重要な役割を果たしているにもかかわらず、生物学分野では「へんてこ」の烙印(笑)を押されている生き物について語ってきました。

私(守屋)がシロアリ、石田先生が藻類、井藤賀先生がコケ。
シロアリは植物のなかでも他の生き物が食べられない部分を専門に食べると同時に、空気からお肉を作り出しというお話しと、藻類の光合成進化が何度も繰り返し繰り返し起きた話(ミドリムシは動物?植物?答えはどちらでもない。ミドリムシはミドリムシ!)、こけが金属のヘルメットをかぶり、鉛や鉄、果ては金まで集めちゃう話。
彼らのパワーこそ、生命圏の大循環に人類の活動も載せていくために学ぶべき力だなと強く思いました。
そして、自然界からは巨大シロアリしろありんも会場に駆けつけ、子供達と写真を撮ったりしていました。

24日は「循環型社会形成に役立つバイオマス研究」と題して、私の他に理研PSCの菊地先生応用光学研究所の志甫先生、豊田中央研究所の高橋先生、鹿島建設の山澤先生と共に、パネルディスカッションでした。
モデレーターには毎日新聞の人気科学コラムを執筆されている元村さんに勤めて頂き、シロアリ共生系酵素によるバイオマス利用、物質循環の計測による総合的な環境資源の開発、石油を作る藻類、サステイナブルモビリティーという新たな概念、廃棄物から資源を作る新しい試みなどを紹介したうえで、将来の社会ではどのようにこれらの技術が生かされていくべきか議論しました。

会場からはアゴラの実行委員長、JSTの理事長など、この世界を牽引する方々からの暖かくも厳しいご意見を頂き、バイオマスのみならず、我々が持てる技術を総動員して、過去のバイオマスに依存する社会から、現在の生きた資源を循環するような社会体制に移行すべく研究とその応用を進めなくてはいけないと感じました。

現状では非常にまだ扱いづらいじゃじゃ馬へんてこ生物たちのアクティビティーを、いかにして利益を出すことが可能な産業活動に結びつけていくか。
科学者の努力の他に、政策立案・実施者の関与や一般の市民の理解と「覚悟」まで話はおよび、明確な結論はなかなか出ない難しい問題であることを再認識しつつも、最後に登場したしろありんに未来を託された私たちは、楽しみつつもいろんな人たちとつながりをもって、新しい環境資源のポテンシャルと向き合って行こうと、思いを新たにしました。

理研のブースでも、しろありんは大活躍で、まわりの温度が一気に5℃くらい上がるような感じ。(温暖化?(笑))
子供達のきらきらした目を見ながら、お母さんお父さんに理研のバイオマス研究のあけぼのについて説明させて頂きました。

参加頂いたみなさま、ありがとうございました。
また、科学未来館でお会いしましょう!

(会場の模様(写真)はここにまたアップします)

シロアリ : 2008.10.12 Sunday
連休の中日。
ラボの定期清掃も重なって、久しぶりに誰もいません。
実験をすこしして、いくつかメールでの連絡を発送したので、僕も今日はもう帰ろうかな。

私たちの研究室のメインの材料にシロアリがいます。
現在主に使っているのがオオシロアリという、1cm近くある巨大なシロアリ。
屋久島の放棄された二次林で採集してきます。
この他に、丹沢で採集するヤマトシロアリ、西表で採集するコウシュンシロアリが時々仲間入りをします。

一般的に生物学の研究は、遺伝的にほぼ均一な状態に育種された「モデル生物」を使うのが王道ですが、環境サンプルをターゲットにする僕らは材料は自分たちで自然の中に取りに行かなくてはいけません。
僕たちのフィールドは、丹沢、屋久島、西表島と、他の研究者にはちょっとうらやましがられるような場所なのですが、サンプリングは当然遊びではないので、サンプリング出張中は基本的に、湿度100%の森の中で泥だらけになってはいずり回ることになります。
しかし、この経験は必ずしも辛いものではなくて、実際にシロアリだけではなく、いろいろなわけのわからない(失礼!)生き物たちが倒木にとりついて、または土の中で密やかに息づいているのを見ると、いろいろな研究のアイディアがわいてきます。実際、森から切り取ってきたシロアリの営巣木+土でさえ、シロアリだけでなく、実に様々な生き物が共存していて、シロアリを取り出すときに見ているとうっかり時間を忘れてしまいます(<駄目)。

シロアリは、腸の中に原生生物・バクテリア・古細菌を持っていて、それぞれがセルロース分解・窒素固定/還元力除去・メタン生成のような機能をもって唯一のインプットである木質バイオマスを利用するひとつのシステムを構築しています。
つまり、シロアリ自身が、沢山の種類の生物の集合体としてひとつの機能を発揮している生態系=ミクロのフィールドということも出来ると思います。

シロアリの研究は、バイオマス利用として最近注目して頂いていますが、実はそういった生態系という今はまだ茫漠とした生物の海を科学の言葉で記述する試みの第一歩を刻むための、「モデル生態系」研究としても非常に重要だと考えています。

フィールドで思いつくアイディアは、もちろんその全てを実行出来るわけはないのですが、全ての生物活動は、森の中で、海の中で、フィールドで、たっくさんの生き物が絡み合ったネットワークとして行われているわけで、ひとつだけの生き物を切り離した生物学の先に、別の生物系科学としてそういう様態をハンドリングする新しい科学があるのではないかなと夢想しています。

そんなわけで、ぼくはフィールドでの瞑想(?)を大切にしたくて、プライベートでも有給休暇が取れるととりあえず西表島に飛んでいってしまいます。(<駄目2)

シロアリの共生原生生物の動画はこちらからどうぞ
http://www.riken.jp/bob/info.html

死の海から贈り物は届くか : 2008.09.28 Sunday
ユニットとは直接的には関係ないのですが、守屋は東京港水中生物研究会という緩やかな集合体に混ぜて頂き、二ヶ月に一度お台場で潜水をしています。
もともと東京港の外来生物を調査記録することが目的のひとつであるこの会では、サンプリングをする方もいるので、僕も微細藻類のサンプリングをこの会でさせて頂いています。

9月14日に、ちょうど1年目の潜水に行ってきました。
閉塞水域であり、かつ強い富栄養化水域でもあるお台場の海は、真夏の太陽で元気付いた微細藻類が大量の有機物を生成し、それを利用するバクテリアによって水域内に強烈な無酸素水塊が発生し、動物をほとんど全滅にまで追い込むそうです。
ちょうど陸上の冬に当たる不毛の季節は、お台場の海では真夏にやってくるわけです。

まだ、暑いこの季節、水中は微生物と粒子状有機物のもやがかかっていて、透明度は最悪。特に船の科学館のポンドでは、手の届くところにあるはずの岸壁が潜降中に見えなくなり、コンパスがないとあっという間に迷子になるほどです。

7月までは生き残っていた前の冬に発生したらしい大量のヒメホウキムシという着生生物は今回の潜水ではほとんど全滅し、代わりに小さなイソギンチャクが沢山増えていました。

海底は、貝やカニの死骸がごろごろしていますが、微細ななにかが動いている気配も感じられ、とりあえず視界が全く無くなるのもいとわず、水と泥を採集してきました。

富栄養化の最先端を行く東京港の海。動物の観点から見れば圧倒的な死のボトルネックの季節に生きる微生物たちに、なにかを僕たちは学ぶことが出来るでしょうか。

リンクより7月の潜水の様子と微細藻類を見ることが出来ます)

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